安全性分析

安全性分析の基礎を学ぶ!

会社が倒産する理由を知ろう

資金繰りに行き詰ったとき、会社は倒産する!

会社の規模が大きければ安全というわけではない

財務分析には3つの視点があります。収益性、 収益性そして安全性です。ここではその「安全性」を測る方法を学んでいきましょう

会社の安全性とは、ずばり「会社が今後も事業を継続していけるかどうか」をみること。会社は人と違い、原則的に寿命がありません

「自ら解散しない限り、事業を永続させる」という前提のもとに各種の制度がつくられているのです(これを会計の専門用語で「ゴーイング・コンサーン といいます)

もし事業が継続できなくなったときは、会社が死ぬとき、つまり「倒産」 です。 安全性分析のキモは、会社がこの倒産リスクを抱えていないか読み取ることにあります。では、そもそも会社はどんな場合に倒産するのでしょうか

一般的には「小さな会社ほど体力がなくてつぶれやすい」というイメージがあるかも
しれません。しかし規模が大きければ安心かというと、必ずしもそうではありません

現に、日本を代表する巨大企業のJALや、世界最大級の自動車メーカーだったGM社も一度は倒産しています。人でいえば、体の大きな人が必ずしも健康とは限らないのと同じです

また、「赤字が何年も続くと倒産する」と思われる方も多いでしょう。しかし意外にも、毎年赤字でも何年も事業を継続できている会社は少なくありません。逆に、「黒字倒産」という言葉があるように、 利益を出している会社でもつぶれるケースはあります

もちろん、赤字の決算が長期間続けば倒産のリスクは大きいのですが、厳密には 「資金繰りに行きまったとき」に会社は倒産するのです

信用を失った会社は事業を継続できない

資金繰りに行き詰まるとは、簡単にいえば「借りていたお金を期日までに返せなくなる(債務不履行に陥る)」ことです

例としては、 業績不振で借金返済のためのキャッシュが足りなくなるのが一般的です

また一見業績が良好に見える会社でも、 無理に事業拡大をしようとして、 設備投資のために多額の借入をしたり、 膨大な在庫を売りさばくことができず、 手元の資金が枯渇したりして、期日までに返済が果たせないといったケースが挙げられます

とくに不渡りを出す(手形や小切手の支払いが落る)と、ペナルティとして全金融機関にその事実が通告されます。 いわゆる 「ブラックリスト」に掲載され、今後融資が受けにくくなってしまうのです

赤字でも、銀行からの融資によって何とか事業を継続できている会社にとって、これは死刑宣告も同じ。 債務不履行によって信用を失うことが、いかに恐ろしい事態を招くか、おわかりいただけるかと思います

安全性分析まとめ①

1 安全性分析とは、会社が倒産するリスクを見極めること

2 会社の規模が大きくても、倒産することがある

3 赤字かどうか以上に、資金繰りに問題がないか注意する

B/Sの「上下」のバランスをみる!

借金(他人資本)の割合が極端に大きい場合は、要注意!

安全性は、 会社の骨格と血液の流れをみる

収益性の分析では、 損益計算書をおもに使いましたが、安全性を分析するときは、貸借借対照表とキャッシュ・フロー計算書の2表を使います

損益計算書からわかるのはあくまで会社の運動量とその成果。会社が健康かどうかを知るには、体の土台となる骨や血液の流れをみることが欠かせません

つまり会社の資産 (体つき)がどのように構成されているのか、 また現金の動きに異常はないかを確認するのが、安全性分析なのです

では、詳しくみていきましょう

上のページで、「会社が倒産するのは資金繰りに行き詰まったとき」と説明しましたが、資
金凍りに行き詰まる会社の決算書には、最終的に次の2つの異常が表れます

①資産の元手のうち、借金(他人資本)の割合が極端に大きく、 バランスが悪い
②現金を生み出せていない

①と②は関連しており、 借金が膨らむほど、現金の流出はさらに加速します。つまり倒産する会社は、貧弱な骨格で、大量の血を流しながら走っているようなものなのです

上記はとくに未期的な症状ですが、安全性の分析では、会社がこのような状態に近づい
ないかを多角的に確かめていきます

貸借対照表の右側の「上下」のバランスをみる

具体的な分析方法ですが、はじめは貸借対照表をみていきます。まず確認したいのは、資産の元手の「上下」、つまり負債(他人資本)と純資産(自己資本)のバランスです。

会社が倒産するのは、借りたお金を返せなくなったときでした。これは裏を返せば、原則借金がなけれれば会社は倒産しないということ。つまり自己資本が多ければ多いほど、会社の安全性は高いといえます

その指標となるのが「自己資本比率」 です。これはすべての資本のうち、 自己資本(純資産)でまかなえている割合を表した数値です

自己資本比率は、いわば会社の「骨格の太さ」を表しています。骨格がしっかりしていれば、その上に十分な筋肉(固定資産)をつけ、活発な運動によってたくさんの血液を生み出せます

しかし骨格が貧弱なまま、 重いロボットスーツ(負債)を着れば、足元がふらつき転んで、大量出血することになりかねません

日本企業の自己資本比率の平均は35~40%程度で、 50%以上あれば安全性が高いといえます。ただし、その水準は業種や業態によって異なり、財務省の法人企業統計では製造業なら約45%、非製造業なら約35%が平均です。なお、負債が増えすぎて、 仮に資産のすべてを売ったとしても負債を返済できない状態を「債務超過」と呼びます

安全性分析まとめ②

1 安全性は、貸借対照表とキャッシュ・フロー計算書で確認

2 貸借対照表の右側の「上下」(負債と純資産)のバランスをみる

3 自己資本比率(純資産の割合)が高いほど、会社の安全性は高い

B/Sの「左右」のバランスをみる!

「流動比率」は高いほど、「固定比率」は低いほど安全!

短期の安全性は「流動比率」でわかる

会社の安全性をさらに深く測るには、貸借対照表の「左右」 のバランスも大切です。この左右のバランスから、 会社の 「借金の返済能力」がみえてきます

まず確認したいのが、流動負債に対する流動資産の割合です。これを 「流動比率」 といいい、比較的短期の資金繰りの安全性を表します。

わかりやすく身近な例で考えてみましょう。仮にあなたが100万円を借りていて、来月未が返済期限とします。現金や預貯金、あるいは商品券のように売ればすぐに現金化できるものが十分にあれば安心でしょう

しかし、そうでなければ車や家、土地などの財産(資産)を売らなければなりません。とはいえ、家や土地は商品券などと異なり、すぐに売れるとは限りません

このようにすぐ(1年以内) に返済義務のある流動負債に対し、1年以内に現金化できる資産(流動資産) がどれだけあるかを表した数値が、流動比率です

流動比率は100%を超えて高いほどよく、一般的には150%以上あれば安全性が高いといわれます。 1年以内に返す借金に備えて、すぐに現金化できる資産 (現預金や売掛金など)を1.5倍以上もっていれば安心、というわけです。なお日本企業の流動比率は、平均で130~140%程度で推移しています

中長期の安全性がわかる「固定比率」と「固定長期適合率」

次に確認したいのが、 自己資本 (純資産)に対する固定資産の割合です。これを「固定比率」といい、中長期的な資金繰りの安全性がわかります

土地や建物、 工場設備など、 長期間使用する固定資産は、返済義務のない自己資本で運用する割合が高いほど安全ですよね。 そのため固定比率は、 低いほどよいとされます

この数値が100%を超える場合、固定資産の一部を負債によって運用していることになります。 ただし、100%を超えたからといって即危険、 というわけではありません。なぜなら日本の多くの企業は、銀行から融資を受けて設備投資を行っており、実際に日本の全産業の平均値は150%程度あるからです

ただ固定比率が高いときは「すぐに返済が必要な借金(流動負債)で固定資産を購入していないか」チェックが必要です。それを確かめるのが「固定長期適合率」で、これは純資産と固定負債 (すぐに返す必要のないお金)の合計で固定資産の代金をまかなえているかを表します

固定長期適合率が100%を超えた場合は、固定資産の一部を流動負債でまかなっているということ。身近な例でいえば、返済期限の短い消費者金融に借りたお金を、住宅資金の一部にあてているような状態です

安全性分析まとめ③

1貸借対照表の「左右」を比べれば、借金の返済能力がわかる

2 「流動比率」が高いほど、短期的な資金繰りは安全

3 「固定比率」は低いほどよく、高いときは「固定長期適合率」もみる

P/LとB/Sの組み合わせでみる

「借金の返済能力」と「トラブル耐性」を数値化する!

その他の安全性指標① 「利払い能力」

ここまでは貸借対照表を使った安全性分析の方法をみてきました。 しかし実は、 損益計算書と組み合わせてみることで、 さらに細かく、具体的な指標を得ることができます

その1つが、「インタレスト・カバレッジ・レシオ」です。 難しそうな名前ですが、要は会社の「利払い能力(借入金などにつく利息の支払能力)」のことを指します。この数値をみれば、その会社が支払利息に対して何倍の「事業利益」を稼いでいるかがわかります

ちなみに事業利益とは、「営業利益+受取利息+受取配当金」のことです。計算はとても単純で、損益計算書に書かれた数字から容易に求められます。簡便的に営業利益のみを使う場合もあります

インタレスト・カバレッジ・レシオの数値が高いということは、会社の金利負担能力が高く、財務的に余裕があることを意味します。平たくいえば、「借金(負債)の返済能カが高い」ということです

業種によって差はありますが、一般的には、5倍以上あるのが望ましく、10倍以上なら安全性がかなり高いといえます。一方で、3倍を下回ると注意が必要で、 その状態が数期連続すると金融機関からの資金講達に影響がでるおそれもあります。ゆえに金融のプロも重要視する指標です。

その他の安全性指標② 「手元流動性比率」

もう1つの安全性の指標が 「手元流動性比率」です。これは「会社が月商の何か月分の現金を手元にもっているか」 を表したもので、「現預金月商比率」ともいいます

この数値は、損益計算書と貸借対照表を組み合わせることで求められ、 貸借対照表の「現預金」と「短期有価証券」の合計額 (つまり「現金同等物」)を、1か月当たりの平均売上高(月商)で割ることで算出できます

例えば、算出した数値が「3」なら、「月商の約3か月分に相当する現金(同等物)が手元にある」ということです

では、そもそもなぜ、このような数値を出す必要があるのでしょうか。それには「運転資金」が大きくかかわってきます。運転資金とは、 いわば “事業をまわす” のに必要なお金のこと

詳細は後述しますが、事業を継続させるには、 社員の給料から家賃、 水道光熱費にいたるまで、 毎月一定のお金(費用)を支払い続けなければなりません。そのため会社はある程度のお金(現金)を常に手元に置いておく必要があるのです。

だから、仮に手元流動性比率が「3.0」、つまり月商3か月分の現金が手元にあるとわかれば、万一売上がゼロでも、災害で商品がすべて廃棄になっても、3か月間は大丈夫 (即倒産する心配はない)と判断できます

安全性分析まとめ④

1 P/LとB/Sを組み合わせれば、より細部まで安全性を測れる

2 「事業利益」は支払利息(+割引料)の5~10倍あると安心

3 「手元流動性比率」が高ければ、当面の運転資金は工面できる

現金(キャッシュ)の流れを確認!

キャッシュ・フローのパターンで安全度がわかる!

会社の体に異変を感じたら血流をチェックする

最後はキャッシュ・フロー計算書を使った安全性分析です。 P/Lで運動能力が急低下し、B/Sでバランスが崩れているとき、 血流 (会社の現金の流れ)にも問題が生じている可能性が高いです

資金繰りに行き詰まるということは、体に十分な血液(現金) が巡らなくなるということでもあるからです

安全性を分析するうえでは、「営業CF」「投資C F」「財務CF」の3つの数値の大小(プラスマイナス)に注目しましょう。それぞれの数値の大きさを比較してみることで、会社の健康状態を大きく5つのパターンに分類できます

パターン1 は、事業が好調で多くの現金を生み出せている状態です。事業で得た利益を使
い設備投資を行っており、さらに余った現金を借金の返済や配当に回しています。これにより負償(他人資本)の比率も下がるため、健康状態は極めて良好といえます

パターン2は、事業で現金を生み出せてはいるものの、それを上回る額を投資している状
態です。営業CFのプラスでまかないきれない分を、外部からの資金調達で補っています。べンチャー企業など、成長過程にある会社はこのようなパターンを示しやすい一方で、単に業績が低迷し、営業CFが減少している場合もあり得ます。 その場合、 業績がさらに悪化するとパターン4の状態に陥る危険性もあるため、注意深い経過観察が必要です

パターン3 は、事業活動で現金が流出している、つまり経営が上手くいっていない状態です。資産を売却して現金をつくり、事業で出た損失を補い、さらに余ったお金を借金の返済にあてています。 有価証券などの贅肉(流動資産)を減らしているならまだしも、工場の売却など、筋肉(固定資産)を削っている場合は、将来の業績に悪影響を与えるので要注意といえます

パターン4は、業績不振にもかかわらず、事業継続のために設備投資を行わなければならないことから、それらの資金不足を多額の借金で補っている状態です。 傷だらけの体を輸血によって何とか保っているようなもので、融資が止まれば倒れてしまうため、営業CFの早急な改善が必須といえます

パターン5は、 体のあちこちから出血している状態で、最も倒産の危険性が高いパターンです。業績不振で会社の信用が低下し、銀行借入など新たな資金調達も困難と考えられます。手元に現預金などが豊富にない限りは、長くはもたないでしょう。倒産直前の会社は、このパターンが少なくありません

安全性分析まとめ⑤

1 貸借対照表に異変を感じたら、キャッシュの流れをチェック

2 3つのCFの±の大小とその原因から、安全度がわかる

3 営業CFが大きく+、投資CFが-、財務CFが-が理想的

運転資金を正しく理解しよう

利益が出ていても、手元の現金が足りないと危ない!

利益が出ていても倒産(黒字倒産)するワケ

ここまで財務三表の数値から安全性を分析してきましたが、最後に 「運転資金」の観点
から会社の資金繰りについて考えてみましょう。運転資金とは、 事業を継続するために必要な資金のことでした 

これをもう少し厳密にいうと、「事業で発生する “入金”と“支払い”の差額を埋め合わせる資金」といえます。一体どういうことでしょうか?一例として、パンの製造会社の事業 (取引)の流れを追ってみましょう

この会社は、ある月の初めに仕入業者から掛取引で原材料を仕入れ (①)、 月末に取引先のホテルにつくったパンを納品しました(②)。その後、翌月末に買掛金50万円を仕入業者に支払い(③)、翌々月末に売掛金100万がホテルから入金される予定です (④)

この取引によって、パンの製造会社は「100万円-50万円=50万円」の利益を得ることになります。しかし、実際の現金の増減をみてください

翌月末に買掛金を支払ってから、翌々月末に売掛金が入金されるまでは、現金は「-50万円」のままです。つまりこの間 (支払いから入金まで)は、手元の資金で対応しなければなりません。 そのための資金が、運転資金なのです

もしこの会社が30万円の運転資金しかなかったら、期日までに買掛金を支払うことができません。そうなると、利益が出ていても借入をしない限り、資金繰りに行き詰まって倒産しかねません。事業が順調なのに潰れてしまう、いわゆる「黒字倒産」になりかねないのです

売上と運転資金の関係を把握する

では、運転資金はどれほど必要なのでしょう。日本企業の運転資金の平均をみると、製造業で日商の60 ~ 70日分程度、非製造業で日商の30日程度となっています

個々の会社に必要な運転資金を調べたいときは、次の計算式を使います

運転資金=
売掛金+ 棚卸資産−買掛金

売掛金」「棚卸資産」「買掛金」の金額は、貸借対照表に書かれた数値をそのまま使えばOKです

さらにこの金額を「売上高」と比較すれば、売上に対して必要になる運転資金の割合と期
間もわかります(例:運転資金が3000万円、売上が6億円の場合、「3000万÷6億」で、売上の5%にあたる。これは「365日×5%」で、日商の約18日分の額となる)

ここで注意したいのは、売上が増えたときです。上記の例でいえば、翌年に売上が10億円に増えた場合、運転資金は「10億×5%」で5000万円必要になります。つまり前年よりも、2000万円余分に事業を継続するための資金が必要になるのです

このように売上の増加にともない、 必要な運転資金は自然と増えることを理解しておきましょう。さらに、売掛金の回収期間がのびるなど、運転資金の条件が悪化(長期化)すれば、資金繰りはさらに圧迫されます。会社の運転資金がどのように変化しているか、その要因を分析することが重要なのです

3つの回転期間を求めれば運転資金が必要な期間がわかる

会社の運転資金の条件(必要な金額や期間)がどのように変化しているのかを知るのに、有効な方法が1つあります。 それが「キャッシュ·コンバージョン· サイクル (CCC = Cash Conversion Cycle) です。CCCは、日本語では「現金循環化日数」と呼ばれます

要は、事業活動を行ううえで支払った現金が、在庫や売掛金などに形を変えて、再び現金として戻ってくるまでに要する日数を表したものです。CCCが長くなるほど、事業を継続させるためにより多くの運転資金が必要となります

CCCは、「売上債権(売掛金)」「棚卸資産(在庫)」「仕入債務(買掛金)」の3つの“回転期間”(現金や売上になるまでにかかる期間)を求めることで算出できます。 1つずつみていきましょう

① 売上債権回転期間

売上債権(売掛金)を回収(ツケで売った商品などが現金化)するまでの期間のこと。売上高に占める売上債産(売掛金)の割合に、年間日数(365)を掛けることで求められます

② 棚卸資産回転期間

在庫などの棚卸資產が売上に変わるまでの期間のこと。売上原価に占める棚卸資産の割合に、年間日数(365)を掛けることで求められます

③ 仕入債務回転期間

掛取引で仕入れた原材料や商品の代金(買掛金)を支払うまでの期間のこと。売上原価に占める仕入債務(買掛金)の割合に、年間日数(365)を掛けることで求められます

そして最後に、「①+②−③」 を行えば、CCC (運転資金が必要となる期間)が求められます

資金繰り悪化の要因を回転期間の長短から探る

CCCの計算式をみて気づくのは、3つの回転期間のうち、いずれかの日数が変われば必要な運転資金も増減するということです。会社の資金繰りが運化にするのは、売上債権(売掛金)や棚卸資産の回転期間が長期化したときや、仕入債務(買掛金)の回転期間が短期化をしたときです

では、それぞれが長期化·短期化する原因には、どんなものがあるのでしょうか。例えば、① 売上債権回転期間 の長期化が起こるのは、売上を無理に増やそうとして、 顧客の支払い条件を緩めている (代金回収までの期間を長くしている)場合が考えられます

また、② 棚卸資産回転期間 が長期化している場合は、売上が計画を下回って売れ残りの在庫が増えてしまったとき、または翌年の売上が大幅に増加することを見込んで、あらかじめ大量の原材料や商品を仕入れたときなどが考えられます

最後に、③ 仕入債務回転期間 が短期化するのは、商品や材料を安く仕入れる交換条件として、代金をより短期間で支払う約束をしたときなどが考えられます。また、何らかの要因
によって仕入先に対する交渉力が低下し、支払条件を厳しくされてしまったケースなども考えられるでしょう。

こうなるとキャッシュの流出が先行するため、 利益は出ているのに営業CFはマイナスという状況が常態化する危険もあります。このように3つの回転期間が変動することで、必要な運転資金も増えたり減ったりします

逆にいえば、 資金繰りが悪化しているときは、3つの回転期間のうちのいずれかが長期化(短期化) していないか調べることで具体的な原因を分析できるのです

3つの回転期間の平均はどれくらい?

では、3つの回転期間は、それぞれどれくらいの猶予をみておけばよいのでしょうか

業種や業態によっても異なりますが、日本企業の平均をみてみると、① 売上債権回転期間 は、 60日程度で推移しています。製造業なら65日程度、非製造業なら55日程度です。業界による差も大きく、製薬業界の場合は約100日程度を要するのに対し、小売業の場合は20日程度と短くなっています

② 棚卸資産回転期間 は、50日程度が全体の平均です。製造業で60日程度、非製造業では半分の30日程度。商品(現物)を作って売るメーカーのほうが、長期化する傾向にありますが、同じメーカーでも製薬業界は150日程度と長めで、自動車産業や商品の回転が早い小売業は40日程度と短めです

③ 仕入債務回転期間 の平均は、①売上債権回転期間とほぼ同じ60日程度です

安全性分析まとめ⑥

1運転資金とは、「入金と支払いの差額を埋め合わせる資金」

2 売上の増加にともなって、必要な運転資金も増える

3 3つの回転期間を調べれば、資金繰りの悪化の原因がわかる