成長性分析

成長性分析の基礎を学ぶ!

会社の成長が、ホンモノかどうか見抜くには?

「成長率」と「成長要因」をセットでみる!

「身体能力」と「体の大きさ」で会社の成長性を判断できる

財務分析には3つの視点があります。収益性、 安全性そして成長性です。ここではその成長性分析にスポットをあて解説していきます。そもそも何をもって、私たちは「会社が成長している」 と判断できるのでしょうか

そのポイントは、大きく2つあります。1つは「身体能力が上がっているか」。例えば、50mプールを泳ぐのにこれまでは40秒かかっていたのが、30秒で泳げるようになったら「成長したな」と感じますよね。 同様に、昔と比べて売上(運動量)や利益 (成果)が上がっている会社は成長しているといえます

もう1つは「体が大きくなっているか」。子どもから大人になるにつれて身長が伸びるように、会社も設備などの資産 (体つき)が年々増えているかをチェックすることで、どのくらいの速度で成長しているかが確認できます

そして、この「身体能力」と「体の大きさ」の2つが比例して成長していくことが理想です。身体能力(売上)が伸びても体 (資産)が大きくならなければ、 やがて記録(利益)は頭打ちになるでしょう。 また逆に、体ばかり大きくなって身体能力が伸びなければ、 収益性は下がってしまいます

成長している企業を見抜くには、人間と同様に身体能力と体つきの両方が、 バランスよく成長しているかが大事なのです

数値の伸びだけではなく、成長した“背景”にも目を向ける

成長性の分析では、 売上や利益が「どれだけ成長したか」だけでなく「なぜ成長できたのか」、その要因を探ることも大切です

会社の成長要因(成長ドライバー)には、大きく「外部要因」と「内部要因」の2つがあります。成長した理由が、 会社の “外” にあるか、か、”内”にあるかの違いです

外部要因の代表的な例は、国の経済政策や景気動向などです。それ以外には、 業界特有の需給サイクル (例: 4年周期で買い替えられる家電製品など)や特需景気(例: 東京オリンピック開催による建設ラッシュ)なども外部要因といえるでしょう

一方、内部要因は、会社の経営努力の賜物。例えば、新製品投入や、 新事業の展開などによる売上の増加が考えられます

このように会社の成長要因にまで目を向けるべきなのは、「数値の大きさ」に惑わされないためです

例えば、「A社の売上は前年比20%増」という数値だけみれば、大きく成長しているように思えますが、「業界平均が前年比30%増」だったらどうでしょう。 A社はむしろ「低成長な会社」といえますよね

子どもの身長も同学年で比較するのと同じように、会社の成長もまずは同じ業種で比較してみましょう

成長性分析まとめ①

1 「身体能力」と「体の大きさ」が、ともに大きくなっているか確認

2 成長の理由が「外部」にあるのか「内部」にあるのかチェック

3 伸び率と成長要因をセットで考えると成長の実態がつかめる

売上と利益の成長度合いに注目!

「売上高増加率」で身体能力の伸びをみる!

売上の増減から「成長性」をチェック

では、決算書から会社の成長性を測る具体的な方法をみていきましょう

まず調べたいのは「会社の身体能力が上がっているかどうか」 です。

そのためには、損益計算書をみて運動量 (売上) と成果 (利益)が伸びているかを確認します。運動量が増えているかどうかは、「売上高増加率」を出すことで判断できます

これは「前期に比べて売上がどれだけ増加したか」を表す指標で、例えば前期の売上が1億円で、今期の売上が1億1000万円だとすれば、売上高増加率は10%になります。売上高増加率をみるときのポイントは、前期の売上と比較するだけでなく、 過去3~5年くらいの数値もみて、“時系列で” 変化を捉えることです

例えば、 前年比ではマイナスだったとしても、それは一時的な停滞に過ぎず、複数年のスパンでみれば業績は登り調子にあるかもしれません。 逆に、 たとえ前年比プラス30%でも、中国人の爆買いやオリンピックの建設ラッシュのように、一時的な外部要因で増えただけかもしれないのです

このように売上高増加率をみるときは、過去3~5年の数値をグラフ化し、上昇しているのか、あるいは下降しているのかの ”トレンド(傾向)”を読み取ることが大切です

また、あわせて他社比較分析も重要になります。例えば、 過去5年間で売上が20%伸びていても、 他の会社は30%と、 それ以上に伸びているかもしれません。 このような場合、業界でのシェアを落としていることになるので、会社は十分に成長していないといえます。

売上と一緒に「利益率」も伸びているか

一方、 会社の運動量 (売上) が増えていても、成果(利益)が上がっていなければ、 順調に成長しているとはいえません

そこで売上高増加率にともなって、 売上総利益率も上昇しているかを調べましょう。これが悪化している場合は、 売上よりも費用の増加するペースが上回って、 儲ける効率(収益性)が下がっていると判断できます

売上総利益率が低下する原因としては、 原材料費の高騰(外部要因) や、 競争激化による単価低下(外部·内部の複合要因)などが考えられます。 利益率が数年にわたり低下している場合、会社の価値をつくり出す力が弱まっているおそれがあるため、注意が必要です

また、会社の儲ける力を表す営業利益率が下がっていないかも確認しましょう。 これが低下しているなら、売上総利益率が低下しているか、販管費比率が上昇しているはずです。販管費比率が上がっている場合は、 販売効率が悪化している、 つまりムダな動きが増えていることを意味します

成長性分析まとめ②

1 「売上高増加率」で会社の身体能力の成長度がわかる

2 増加率は、「時系列分析」と「他社比較分析」で判断する

3 売上が増えていても「利益率」が下がっていないかチェック

資産の成長度合いに注目!

会社は「資本→資産→売上→利益→資本…」のサイクルで大きくなる!

会社の体が成長する方法は大きく2つに分けられる

次に、「会社の体が大きくなっているか」を決算書から調べてみましょう。ここでは損益計算書と貸借対照表を使います
会社の体が大きくなるとは、 すなわち 「会社の資産が増える」 ことを意味しました。その方法には、大きく2つののバターンがあります
1つは、売上や利益を拡大していくことで自力で成長する方法、もう1つは他社を買収・合併することで一気に成長する方法です

また、自力で成長する場合も、借入金の 「ある・なし」で成長のスピードが変わってきます。ここからはそれぞれの成長の仕組みをくわしくみていきましょう

会社が成長するパターン①-1 自力による成長(借入なし)

はじめに、借入金なしで自力で成長するパターンをみていきます。上の図は、会社が自力で成長していくサイクルを視覚的に表したものです。私たちが毎日運動や筋力トレーニングを積み重ねることで少しずつ体を大きくできるように、会社も自力でいきなり10倍、 20倍と成長できるわけではありません

多くの会社は、開業時に集めた資本を元手に、原材料や設備機器などの資産を揃え、それを活用して商品をつくり出し、 売上と利益を上げていきます。 そして最終的な利益を、翌年度の純資産(資本) に加え、 さらに設備やシステムを充実させて資産を大きくします。そうして少しずつ資産を拡大していくことで、売上や利益伸ばしていくのです

このように会社は、 「資本→資産→売上→利益→資本…」 のサイクルを繰り返して、年輪を刻むように成長していきます。このとき注意してみたいのが、「資産の拡大にともなって売上や利益が増えているか」ということ

先ほど説明したように 理想的な成長とは、「身体能力」と「体の大きさ」が比例して大きくなっていくことです。つまり、資産の増加率と同じか、 それ以上の割合で売上や利益が増えていなければ、 たとえ絶対額が大きくなっていても順調に成長しているとはいい難いのです

ROAで、会社が健全に成長しているか確かめる

会社が順調に成長しているかを確かめるには、収益性分析で使った「ROA (総資産利益率)」が役立ちます

ROAは、「資産→売上→利益」のサイクルの効率性を表し、「資産に対してどれだけの利益を得られたか」を判断する指標でした

従って、 時系列分析を行い、 ROAの数値が変わらなければ、資産の増加と同じペースで利益も増加しているといえます。そのような会社は、収益性を犠牲にすることなく成長できていると判断してよいでしょう

一方で、ROAの数値が下がっている場合は、資産の増加に利益の増加が追いついておらず、会社の収益性が低下している証拠です。そんなときは、 会社のどの部分に原因があるのか調べてみる必要があります。次に、そのための方法をみていきましょう

ROAを2つに分解して低下の原因を探る

ROAについて、もう一度おさらいをしてみましょう。ROAは「総資産回転率」と「売上高利益率」の2つに分解できるのでした。これを式にすると次のとおりになります

従って、ROAが低下している場合は、このうちいずれかの数値が悪化しているはずです

A 「総資産回転率」が悪化している

総資産回転率は、「資産がどれだけ売上を生み出せているか」をみる指標でした。この指標が低下している場合、資産の成長に見合った売上の増加ができていないといえます

具体的な要因としては、例えば、設備投資を行ったにもかかわらず、稼働率が上がらず売上の増加に結びついていないといったケースが考えられます

また売上を生み出さない「現金」や「有価証券」といった脂肪(流動資産)ばかりが増えていれば、体(資産)は大きくなっても運動量(売上)は増えていきません

B 「売上高利益率」が悪化している

一方、売上高利益率は、「売上に対する利益の割合」を表しました。これが低下した場合は、ムダな動きが増えた、つまり効率的な経営ができていないということです

その原因はさまざまですが、例えば、商品競争力の低下により価格が下がったケースや、販売効率が落ちた(売上に対する人件費が増えた、商品が売れず広告宣伝費を増やした)ケースが考えられます

このように、ROAに低下がみられたときは、まず総資産回転率と売上高利益率のどちらに原因があるかを見極め、さらにその悪化の原因がどこにあるのかを、決算書の項目を細かく見ていくことで明らかにします

会社が成長するパターン①-2 自力による成長(借入あり)

ここまでは、100%自己資本のみで成長するパターンをみてきました。次に同じ自力による成長でも、借入金を活用して成長するパターンをみていきましょう

借入金、つまり負債は、上手に使うことで「レバレッジ(てこの原理)」が働きます

事業で生み出した利益だけでは、その範囲でしか資産を増やせませんが、負債(他人資本)の力を借りることで、より速く、事業規模を拡大できるのです

会社は人と違い、自分の意思で成長のスピードを進めることができます。負債はそのための便利な道具ともいえるのです

負債の増加は純資産とのバランスが大切

先ほどの図は、会社が負債を活用して成長していくサイクルを視覚的に表したものです。自己資本のみで成長していくパターン と比べると、「資産」「売上」「利益」が加速度的に増加していることがわかると思います

ここで注目してほしいのは、「純資産」が増えた分だけ「負債」も増えていることです

例えば、1年目で得た20億円の利益を加えて、2年目の純資産は120億円に増えていますが、同じように負債も2年目に20億円増えて120億円になっています。3年目も、 純資産、負債ともに30億円増えて150億円になっていますよね

じつはこのような増え方をしているのには、「自己資本比率を50%にキープすることで安全性を維持する」 という大きな理由があります。つまり純資産の増加と同じ分だけ借
入(負債)を増やしていくことで、財務的に安全性を保ちながら成長を加速できるのです

負債を活用すれば会社の成長スピードは速まりますが、必要以上の負債は身を滅ぼすり
スク因子となります。 人に例えるなら、細い骨格の上に無理して重たいロボットスーツを着た結果、スーツの重みに負けて体が押し潰されてしまうようなものです

必要以上にお金を借りすぎないためには、自己資本の増加と同じ割合で負債を増やせばよく、これが会社にとって安全に成長できる速度であるといえるのです。なお、 これを「持続可能成長率」と呼びます

会社が成長するパターン② 他社の買収·合併による成長

最後のパターンは、他社を買収・合併することで成長する方法(無機的成長) です。これは「M&A(Merger and Acquisition)」とも呼ばれ、会社はM&Aを通じて別の会社を取り込んだり、合体したりすることで、 一気に資産規模(体の大きさ)を倍にすることもできます

M&Aと聞くと、“会社を乗っ取る” というイメージをもっている方もいるかもしれません。しかし必ずしもそればかりではなく、むしろお互いの弱点を補って競争力を強化するために合併するケースのほうが、数としては多いのです

M&Aの利点は、ただ一足飛びに資産を拡大できるというだけではありません

例えば、ソフトバンクは、 ご存じのとおり国内外でM&Aを繰り返すことで、 繁明期の事業であったソフトウェアの流通から、IT、通信分野へと進出し、 大きく成長することに成功しました。

このように、M&Aを行うことで、自前では開発に何年もかかる技術や、獲得が難しい新規顧客を一気に手に入れることができます。言い換えれば、M&Aとは、「お金で時間を買う」 戦略でもあるのです

M&Aを積極的に活用している業界としては、製薬業界が挙げられます。 お互いに合併して大きくなることで、研究開発への巨額投資に耐えられる体力をつけ、また創薬ベンチャー企業を買収して、新薬開発ペースを加速しているのです

成長性分析まとめ③

1会社は「自力で成長する方法」と「M&Aで成長」する方法がある

2自力成長の場合、ROAの低下と負債・純資産のバランスに注意